友達が富士山に登ったらしい。

 

友達が霊峰富士に登ったと言っていて。それも初富士で登頂するまでのルートは全部で4つ。五合目までは車で行くのだがこの時期は混んでいるらしくて。だから一番人気の無い、そして最も過酷な御殿場ルートを選んだら過酷すぎて一合登るのに340分。他のルートだったら登頂出来るほどの過酷さで。

 

勿論後悔したけども行けるとこまで行くかってなってゆっくり登って行って。小屋に居るおっさんにも物凄く心配されて。途中では両脚が攣ってしまって。それでも頑張って登って。足元なんか火山弾だらけだし砂みたいに登っても足を取られて戻されるような斜面を、酸素の少ない中、満身創痍で登って。

 

そして9合目。友達のお父さんは昔富士に登った事があったのだが途中で天候不良で已む無く下山した事があったそう。それが9合目。だから友達に写真撮ってきてくれとカメラを託された。親父のデジカメ使って景色撮っておくかーとなって起動してみると、古いデータがそのまま入っていて、それも何年も前のだから若い家族のものや死んでしまった飼い猫やそういうの沢山入ってて、号泣しながら写真撮って山頂を目指したと。

 

余談だが8合目からは富士山は山梨でも静岡でもないらしい。そこからは神の領域になるとのことで聖域扱いらしい。
9合目は最後の壁と呼ばれる蛇行しながら登らなければいけない場所があってそこを這うようにしてやっと登頂。時間は8時間にも及んだそうだ。両脚攣った時点で心は折れていたけど、それでも登れたこと、富士が見せてくれた景色、すれ違う登山者も「あともう少しだよ」とか励ましてくれるらしい。

 

この経験で一回り大人になったんだよねぇと友達は言っていて、そりゃまぁそうだろうなぁ!俺は行ったことはないけど想像は出来るし、それで何も感じない奴なんて居ないだろう。その後帰りに餃子四人前食べたとか言ってた。だって本当に下手すると死んでしまうようなルートが御殿場ルートで、それも初めての富士山で無謀極まりないにも関わらず成功させたわけで。凄まじい体験だったんだろうなぁと羨ましくなった。

 

 

その後、奇しくも別の知人が「いやー大人になりましたよ」なんて言うもんだから、おお!俺はそういう話大好きだよ!と意気込んで聞いてみると、知人は既婚者で子供も居るのだが一人の時間が無いらしく、AVを見る時間も無いとのこと。だからそんな時は個室ビデオに行くとのこと。それもついに先日いつもより料金を高く支払ってある経験をしてきたと。なんでもTENGAというまぁ所謂アダルトグッズを貸し出してくれるらしいのだが、それが初体験だったらしくあれは素晴らしい、いいものだった、極上の体験をしただとかなんだとかそんな事を。

「大人になった」のこの一言にこうも違いが見られるものかね?!大人って何かね?!ぶっ飛ばしたくなった。お前のその2000円払った極上の?体験とやらは俺の友人の体験の足元にも及ばないのではないだろうかと。なんだか息苦しい、あれここは平地のはずなのに。高山病というものに酷似しているのではないか?いや俺そんな標高高いとこ登ったことないし似てるも何も体験したことないわ。

 

山や海には神様が居ると言うが、神様は多分生き死にが最も感じられる場所に居るんじゃないだろうか。少なくとも個室ビデオには居ないと思う。TENGAの中には住んでないと思う。友達と俺は同い年なのだけど、いい歳の取り方をしているなぁと思う。そう言えばそんな大自然には何年も触れていない。遠くに行かないといけないんだろうなぁ。綺麗なものはいつも身近にはなくて、結構歩いたり身体動かしたりしてやっと見れたりするものなのだから。