レビュー

「私が生きる肌」

映画『私が、生きる肌』予告編映像
フェチズムがある映画でしたね。江戸川乱歩の話に出てきそうな感じのね。
しかしまぁ偏った愛情がもたらす結末っていうのは今まで幾つか見たり読んだりしてきましたが幸あるものに結びつくものってのは少ない気がしますねぇ~。そういうものを鑑賞し終えた時にどうしてもある一言が浮かぶんですよねぇ。「馬鹿は死ななきゃ治らない」っていうね!
い くら他の分野で賢いと評価されても一部分がおかしかったらそれはもうその一点だけで賢いと事実も覆っちゃうでしょ、これ。ね。でもわりと愛憎劇とかは美化 されがちですけどねぇ~悲恋とかに含まれている哀愁って卑下したり問題視したりする傾向にはなかなか行き着かないような。まぁまぁ愛憎劇のみならず成功者 の転落とかもその滑稽さが人間の本質をうんたらかんたら!みたいなさ。
何に惹かれるんでしょうね?そういうのって。馬鹿でもなんでも行き過ぎた結果であっても、その欲求のまま全力で生きたその姿に何かを感じるんですかねぇ~?


こ の映画は全体的な静かで偏っていて異常なんですけど、暴力的ではないんですよね。それはヒロインの方がその愛に対してある程度の理解があったからなのか なぁ。いや諦めからの受容なんでしょうけどもね。でも彼女はその心境に行くまでが早い気がするんですよね。それも全て彼女の思惑があったからと言えばそう なんですけど、僕はでもなんかどっかで彼女は理解を示していた気がするんですよねぇ。そしてこんな結末になるだろうということを、主人公である形成外科医 もヒロインも、そして主人公の友人、主人公の家に仕えているメイドも分かっていたような気がしますね。


少年は残酷な弓を射る

映画『少年は残酷な弓を射る』 - オリジナル予告編 (日本語字幕)


怖い映画でしたねぇ。
この映画はね個人的には人間の根源的なものを描いていると思ってて、本質じゃないですよ、根源ですよこれは。
主人公の少年は産まれた時からやたら母親に反抗しているんですよね。ずっと泣き止まないのは考え過ぎかもしれないけど、その赤ちゃんは個人的なことで泣いていることが多いのだろうけど、母親に対しての嫌悪とかがあの泣き声には含まれていると思えてならないんですよねぇ。


成長してからも彼は母に対して憎しみをぶつけていて、結局その理由は分からないんですよね。まぁラストでその理由に対しての彼の返事は聞けるわけですが、それも明確なものでもないし余計混乱させるような一言だったし。
だからこれね、所謂ね、生理的嫌悪なんじゃないかと。ただねぇ不思議なのは彼は直接的に母親を傷つけるようなまねはしないんですよね。

なんかねぇ復讐してるみたいなんですよね。それがこの映画の最も怖い部分かなぁ。

普 通ね、反抗だったらもっと直接的に暴力ふるって家飛び出して悪に染まるだけの話でしょ?彼はそこが違うんですよねぇ~母、その一点のみに於いての憎悪です よこれは。嫌悪どころじゃない。人を一人陥れるためにはそれなりの計画とかね、頭働かせないとダメなんですよね。現に母以外の人間には普通を演じていて、 それも母に見せつけるような素振りさえ伺える。最終的には惨劇を生むけどそれも周囲に対しての憎しみじゃなく、母を精神的に傷つけるためにしたように思え るんですよ。


自分の子供がどう育つかなんて分からないんですよね。母親は彼に対して酷いことなんて何もしていない、誠心誠意、愛情 を惜しみなく注いで育てていましたよ実際に。しかし彼が持って産まれた憎悪に何も変化はなかった。それがまぁラストには多少救いがあるような感じにはなる んですけども……。
イジメとかもさ、大きな理由なんて無いっていう話って結構聞きますよ。僕は無関心も怖いなぁと思うんですけど、こういう理由な き、なんとなくっていうのも怖いなぁと。たとえばそれがいい意味で使われていてもね。「なんとなく好き」っていうのも怖いまでは行かずとも釈然としなくて 気持ちよくない。そこにはその人なりの思想が感じられないから。