レビュー

「一命」



三池崇史監督は大立ち回り好きですよね。いやアクションシーンを魅せる一つの手法として非常に効果的だし、盛り上がるし、僕も大好きなんですけどね!だのでこの映画にも勿論あります。
時代ものの映画で日本刀でバッサバッサってたまらないんですけど、この映画は厳密には立ち振る舞うけど斬ってはいないんですけどね。
内容としては八つ当たりです。逆恨みですよ。だから僕は共感は出来なかったです。
でも役者陣の演技がね、特に市川海老蔵はやっぱり素晴らしかった。動きも表情も声一つにしてもね。まぁ大袈裟かなとも思えるけど、でもそれぐらいが時代劇は丁度いいんじゃないかなと。そういう観点で見ると、満島ひかりがちょっと控えめだったかなぁと思いました。

役柄的に派手に振る舞うことは出来なかっただろうけど、ちょっと現代っぽかったんですよね。話し方とかが。それは引っかかったなぁ。
侍ってなんなんすか?お前らの志ってなんすか?って映画なんですけど、その解釈は現代的な気もしました。今の人だったら当然、市川海老蔵みたいに考えるかもなぁって。まぁ市川海老蔵は譲歩されてんですけどね、正直。
だからラスト辺りはもう趣旨とか関係なくて命とはみたいな話になってて、理屈関係なくなっちゃってて、元々、共感とかそういう話じゃないんでしょうねこの映画。後味よくないですけど、そのそれぞれの一命については考えさせられました。



「監督失格」



ドキュメント映画なんですけども、決して誰にでもある内容では無いと思う。
リアルではあるんだけど、どこか非現実っぽくあるのはこの人らの生き様が浮世離れしてるからなのかなぁ。それでも映っているのは紛れも無く、人間そのものですね。ただこういう事がありましたで終わってないのは、映像の力もあるけど剥き出しの感情の一つ一つが突き刺してくるからかなぁ。
哀愁じみててね、演歌っぽくて街で言ったら新宿っぽくて、決して小奇麗なもんじゃないです。泥臭い生々しさが全体に漂ってました。
あるAV女優とその人と交際してた映画監督の今までとこれからの話なんですけど、その女優のお母さんが凄い。眼力が凄まじいんですけど、人間的なオーラみたいのが凄いです。普通の世界の話ではないんですけど、でも確かにこの現実に起きた事で、観る人は見届けることぐらいしか出来ないような、何かを思うのさえも憚れるような、そんな映画でした。



ツレがうつになりまして



原作はだいぶ前にパラパラと立ち読みしたぐらいなんですけども、うつも多様化してる昨今だと思うんです。だから一概にこれがうつの全てだ!とは言い切れないと思うんですけど、でも映画の中でも言われてる通り、誰にでもそのおそれはあるのに余りにも病識が薄い。現代病と言われているのにも関わらず。どこかで自分は大丈夫だろうといった根拠のない自信といいますかね。
そういうのが結構あるように思えるんですよねぇ〜だからそんな方々にも分かりやすい内容になっているんじゃないかと思いました。うつの典型的な症状をひと通り揃えてありますみたいな感じで。
でもこういうのって人間だからなんでしょうけど、本当に実際に体験しないと心からは理解できないんですよね。患っていても他の人のそういった症状が理解できないなんて話もあるんでね。なかなかクセのあるもんだとは思うんですけども。

でもそうだなぁこの映画でうつの症状がどんなものかは分かるけども、その症状に対する理由を知りたいとか、どう接したらいいのかを知りたいとかは、また違ってくるかなぁと。それに対しての映画ではないんでね、初めて起きた事柄に対してその夫婦はどう向き合っていったかっていう、その夫婦の日常の話だと思うんで。解決策は得られないかなと思いました。

ただ個人的に引っかかったのはツレという言い方です。
最初は関西の言い回しかと気が行ってしまったんですけど違いますよね、連れ合いとかそういう意味ですもんね夫婦だし。ただそれを宮崎あおいが言うことの違和感。
いくらすっぴんに近い薄化粧で言われてもね、家着がそれなりにオシャレだし漫画家だからパソコンがMacってのも分かるんだけど、全体的に品があるこの映画にツレっていう言葉だけが、どうにも浮いてしまっているようで引っかかりました。
宮崎あおいの年齢の若さもありますよね。だからその言葉だけを取ると宮崎あおいでは似合わないかなぁと。もうちょい上の方のほうがその言葉にはしっくり来るんだよなぁ。



「永遠の僕たち」



なんかいい映画でしたね。えらく抽象的で申し訳ないんですが、鑑賞後の気持ちが後味も悪くないし。
ヒロインが死んでしまうんだなっていうのは予告とかでも分かりきっている事なんですが、ちょっとテーマ的には「死ぬまでにしたい10のこと」みたいな感じかなぁ。死の宣告を受けてどうたらこうたらっていう話じゃなくて、余生をどう愉しく過ごすかっていう、完璧にではないけど結構割り切ってる女の子の話だと思うんで、だからか観ていて暗い気持ちにはなりにくいんじゃないかなぁと。

加瀬亮が幽霊役で出ているのもクッションのように内容を和ませてるってのもあると思う。怖い感じじゃなくて、軍人なんだけどこの世に遺恨がある役柄じゃなくて、むしろ死者も生者も導くような、不思議な立場の役柄なんでね。
ただ吹き替えで観ると違和感があります。加瀬亮が吹き替えしてないんで、他の声優さんだと思うんですけどその方の声で加瀬亮が喋っているといった奇妙、これは奇妙!だから字幕で観たほうがいいかもしれませんね。そのテーマのわりには痛烈に残るようなインパクトは無いのかもしれないけど、違う意味で、不思議で心地よく残る一本なんじゃないかと思います。